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【コラム】金正恩委員長を「称賛」する世の中になるのか

 11月18日の日曜日、ソウルの光化門で「白頭称頌(しょう)委員会」という団体が北朝鮮金正恩キム・ジョンウン労働党委員長のソウル訪問を歓迎する行事を開き、演説会を行った。小学生に「金正恩歓迎」のはがきを書かせた団体も現れた。かくも公々然と、「潔く」金正恩を称賛する行事は初めてだろう。一言で言えば「長生きすると変わったことを経験する」という印象があった。1、2カ月前、ソウル市庁の庁舎に金正恩の大きな写真が掛けられたときに抱いた「ついに来るべきものが来たな」という所感と同じ流れに属するが、世の中の変化があまりに早すぎるという脱力感はより深い。

 もっとも、韓国の大統領が平壌を訪問してあちらの「熱烈な」歓迎を受け、感激して夢中になったとき、南北共同声明に金正恩のソウル答礼訪問が明記されたとき、この種の親北朝鮮行事があるだろうということはある程度予見していた。だが北朝鮮側の歓迎行事とソウルの歓迎行事は、その質においても内容においても大きな差があると見られることから、金正恩のソウル訪問は、そう簡単には実現し難いだろうという留保的観点もあった。

 金正恩がソウルに来るとなったとき、彼が覚悟しないといけないのは、韓国の保守団体や保守層の市民による反対だ。たった一人の反対もたった一度の離脱も許さない、100パーセントの賛成と歓迎一色の官製行事になじんできた金正恩が、ソウルの反対デモを果たしてどのように受け入れられるか、関心がある。ソウルでは北朝鮮のように、未明に起きて星を見て、街頭へ歓迎に出る官製デモを期待することはできない。全く同じ韓服(韓国の伝統衣装)を着て旗を振るといったこともあり得ない。

 現在の金正恩ソウル答礼訪問の件は、18年前に当時の金大中(キム・デジュン)大統領が平壌を訪問したときと、その進展プロセスや内容が非常によく似ている。2001年6月に平壌を訪問して戻ってきた金大中大統領は、金正日キム・ジョンイル)総書記のソウル訪問を実現させて第2次南北首脳会談を行い、その会談を定例化しようと考えた。そこで大統領は、金正日のソウル答礼訪問を細かく準備した。金大中大統領は01年6月から7月にかけての1カ月間に、なんと5回も金正日のソウル答礼訪問に言及し、世論づくりに力を注いだ。当時の平壌放送は、金大統領が平壌を訪問したとき平壌市民の3分の1が歓迎に出てきたのだから、金正日総書記のソウル訪問時にはそれに見合う300万人が歓迎に出てくるべきだと要求したかと思えば、総書記のソウル訪問に先立って韓国で起きている6・25(朝鮮戦争)謝罪要求や訪問反対の動きを直ちに中止せよ、とも求めた。

 金大中大統領は、メディアを通した訪問ムードづくりに注目した。そこで、保守層が主な読者だった朝鮮日報を説得する必要を感じたらしい。金大中大統領は当時、本紙主筆だった筆者を大統領府(青瓦台)公館での夕食に招いた。陪席者なしの単独会食だった。結論から言えば、金大統領は、本紙が金正日のソウル訪問を歓迎するという論旨を展開するよう要請した。筆者は「韓国は多様性ある民主社会であるだけに、金正日を歓迎する新聞もあり、反対する新聞もあるということを示してやる必要がある」と言って、大統領の要請を遠回しに断った。しかし金大統領は退かなかった。「私もそれが分からなくはない。しかし、ほかの新聞は反対するかもしれないが、主な読者層が保守階層の朝鮮日報が彼の訪問を歓迎するというのは、大きな意味がある。ほかの新聞は反対するかもしれない。だが朝鮮日報だけは賛成してもらえるといいと思う」という趣旨のことを語った。

本紙は、金大中大統領の要請を紙面に反映しなかった。むしろ金正日訪韓に当たって、北朝鮮が起こした6・25戦争、1・21青瓦台襲撃事件(1968年1月21日に起きた北朝鮮特殊部隊による大統領府襲撃未遂事件)、大韓航空機爆破事件、蔚珍共匪(きょうひ)事件(1968年、蔚珍一帯に北朝鮮武装工作員が潜入してゲリラ戦を試みた事件)など分断後に起きたさまざまな事件について、韓国国民に釈明ないし謝罪をすることなどを要求する記事をあちこちに載せた。金大中大統領の側近から反応が来た。「それは、来るなと言っているのか、来いと言っているのか?」。その後、本紙は困難な時期を過ごした。厳しい税務調査を受け、発行人が逮捕される事態に直面した。

 この件をここで紹介したのは、少なくとも金大中大統領には、反対者と会って説得しようとする「疎通のリーダーリップ」があったということを言いたいからだ。また、金正恩委員長に、果たして自分に批判的なメディアの論調や反対デモがあろうともソウルを訪問する余裕と度胸と姿勢があるかどうかをテストしたいからだ。もっとも、ソウルの反対デモが困るからか、金正恩を漢拏山の頂上に連れていこうという試みがうんぬんされているのを見ると、そうまでしてでも彼を呼びたい文政権の小細工が哀れに映る。「歓迎」と「称賛」は別物だ。われわれは、金正恩がソウルに来ても、それを徹底して事務的・外交的観点から取り扱わなければならない。

金大中(キム・デジュン)顧問

朝鮮日報朝鮮日報日本語版
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