日本の敵速報

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【#デイリー新潮】米軍は韓国からいつ撤収? 北朝鮮を先制攻撃する可能性は? 読者の疑問に答える

 在韓米軍が撤収に動く。「なぜ、突然に?」「米国はいつ先制攻撃するのか」など、韓国観察者の鈴置高史氏が読者から寄せられた疑問に答える。
6月3日が転換点
――在韓米軍が突然、撤収に向け動き始めたのには驚きました。
鈴置:前回の記事「ついに『在韓米軍』撤収の号砲が鳴る 米国が北朝鮮を先行攻撃できる体制は整った」をお読みいただいたのですね。
 未来の歴史家は「2019年6月3日が朝鮮半島の勢力図が変わる転換点だった」と書くことになると思います。ただ、「在韓米軍撤収を巡る動き」を見ていただけば分かりますが、激震が走る前から「初期微動」が観測されていました。
――なぜ、「今」なのでしょうか。
鈴置:韓国は北朝鮮側に回った。もう、こちら側には戻って来ることはない――と米国が見切ったからです。裏切り者を守ってやるほど、米国人はお人よしではありません。
 2月27、28日のハノイでの米朝首脳会談が、米国が韓国を見限る決定的な転機となりました。この会談で金正恩キム・ジョンウン)政権が核を放棄するつもりなど全くないことが明らかに。
 当然、トランプ(Donald Trump)政権は経済制裁によって北朝鮮を締め上げ、核を放棄させる作戦を続けることを決めました。
 というのに、文在寅ムン・ジェイン)政権は、北朝鮮に対する国際社会の制裁網を破って経済援助に乗り出そうとした。北の核武装を露骨に幇助し始めたのです。
 米朝会談が物別れに終わった翌日の3月1日、文在寅大統領は「3・1節」記念演説で、北朝鮮に外貨を渡す窓口事業である金剛山開発と開城工業団地に関し「再開を米国と協議する」と宣言したのです(「米国にケンカ売る文在寅北朝鮮とは運命共同体で韓国が突き進む〝地獄の一丁目〟」参照)。

催促するなら来るな
 さらに、文在寅大統領は訪米してトランプ大統領を説得しようとした。これに対し米国は「対北援助への賛同を求めに来るのなら、首脳会談に応じないぞ」とクギを刺した。
 そこまで言われても、文在寅大統領はワシントンに押し掛けたのです。そこで米国は4月11日の米韓首脳会談で、両大統領だけで話し合う時間をたったの2分間に減らしてしまった。それも両夫人が同席するという異例の形で。
 単独会談の冒頭で、記者団とのやり取りに延々と時間を使うという手口を使ったのです(「米韓首脳会談で赤っ恥をかかされた韓国、文在寅の要求をトランプはことごとく拒否」参照)。
 米国は念には念を入れました。単独会談がたった2分間だったことに関し、政府が運営する放送局、VOAが「文在寅大統領がトランプ大統領に催促する機会を与えないためだった」「米国大統領が(催促に怒って)韓国大統領に厳しい言葉を投げかけないようにした」と解説したのです(「日米中ロの首脳をストーカーする文在寅、韓国国民の前で虚妄の〝外交大国〟を演出」参照)。
 4月15日には、韓国でも朝鮮半島問題の権威として有名なCSIS戦略国際問題研究所)のチャ(Victor Cha)シニア・アドバイザーが「米韓同盟が崩壊し始めた」と脅しました。

 「The National Interest」の「Trump, North Korea, and the Rush for Peace 」という寄稿の冒頭を要約して翻訳します。

・思いつきで動くうえ、米軍の海外展開に深い疑念を持つ米国の大統領が、朝鮮半島への米軍の関与を放棄する可能性がある。
・「韓国は発展により自主国防が可能になった。だから米軍の韓国からの撤収は歓迎すべきだ」と考える韓国人や米国人がいる。
・だが、半島での米国の存在は空気のようなものだ。存在する間は意識しないが、失った後に生き残りのためかけがえのないものだったと気付くのだ。

米大使「同盟が続くと思うな」
――「同盟を打ち切るぞ」と脅したのですね。
鈴置:実は、駐韓米国大使がすでにそう警告していたのです。2018年11月26日、ハリス(Harry Harris Jr.)大使が「米韓同盟がいつまでもあると思うな」とソウルの公開の場で発言しました。
 これを報じたのは保守系紙、朝鮮日報社の発行する月刊朝鮮。その記事「ハリー・ハリス駐韓米大使、『米韓同盟を当然視してはいけない』」(11月27日、韓国語)から大使の関連発言を拾います。

・(米朝首脳会談により)北朝鮮に肯定的な変化が生まれる可能性が無限にあると考えている。しかし、これは金正恩委員長が非核化に関する自身の約束を守る時にのみ可能になる。
北朝鮮が非核化に関する具体的な措置をとるまで、現在の制裁が維持されるということだ。
・最後に一言申し上げたい。我々の同盟は確固として維持されているが、我々はこれを当然視してはいけない。

 米国大使が「韓国が制裁を破ったら同盟を打ち切るぞ」とはっきりと語ったのです。前代未聞の事件でした。

 もっとも、ここまで脅されても文在寅政権は馬耳東風。5月8日、金錬鉄(キム・ヨンチョル)統一部長官は北朝鮮への食糧援助の方式などを早急に決め、5~6月の食糧が不足する時期までに実行すると表明したのです(「文在寅金正恩の使い走り、北朝鮮のミサイル発射で韓国が食糧支援という猿芝居」参照)。
 米国はこの発言も自らへの挑戦と考えたに違いありません。その4日前の5月4日、北朝鮮が「イスカンダル」と見られるロシア製の弾道ミサイルか、そのコピーを発射していました。
 もちろんこの発射は国連制裁違反です。「韓国は北朝鮮の使い走り」と米国が見なしたのも当然です。

本性を現わした文在寅政権
――文在寅政権はなぜ「馬耳東風」なのでしょうか。
鈴置:「確信犯」だからです。文在寅政権の中枢部は「民族を分断する米帝国主義と戦おう」と考える親北反米の活動家出身で固められています(「米韓同盟消滅」第1章第1節「米韓同盟を壊した米朝首脳会談」参照)。
 彼らにとっては米国との同盟は唾棄すべきもの。米国から「打ち切るぞ」と言われても痛くも痒くもない。むしろ米国側から廃棄してくれればしめたものです。
 そうなれば韓国の親米派も文句は言えないからです。もし、文在寅政権が「打ち切る」と言い出せば、青瓦台(大統領官邸)はデモの群衆で取り囲まれるでしょう。
 それに加え、今やお家存亡の危機。親北派の心の祖国である北朝鮮では制裁による食糧難がひどくなる一方です。金正恩政権の将来を見限って亡命する指導層が相次ぐ。米国が何と言おうと今、北朝鮮にドルと食糧を送らねばならないのです。
 だから文在寅政権は6月5日に800万ドルの対北援助を決めた。人道支援の名目で国連経由です。が、このおカネで購って北朝鮮に送られた食糧が飢えた子どもたちではなく、軍に回る可能性が高いと国際社会は見ています(「文在寅金正恩の使い走り、北朝鮮のミサイル発射で韓国が食糧支援という猿芝居」参照)。
 さらには、国連は経由せずに直接、北朝鮮にコメなどの食糧を送る計画にも動いています。文在寅政権は本性を現わしたのです。

「撤収」は早ければ今秋
――「本性を現わした」国を米国が見捨てるのも無理はない……。
鈴置:これまで我慢を重ねてきた米国の堪忍袋の緒も、ついに切れました。裏切り者を助けるために、自国の兵士や家族の命を危険にさらすバカはいません。
 そこで6月3日、米韓連合司令部をソウルの韓国国防部ではなく、南方の平沢(ピョンテク)のキャンプ・ハンフリー(Camp Humphreys)に移すことを韓国に呑ませたのです。同時に連合司令部の司令官ポストも韓国側に委譲することに合意しました。
 いずれも在韓米軍、厳密に言えば米陸軍撤収への一里塚です(「ついに『在韓米軍』撤収の号砲が鳴る 米国が北朝鮮を先行攻撃できる体制は整った」参照)。

――「在韓米陸軍の撤収」はいつになりますか? 
鈴置:それは「韓国軍の戦時の作戦統制権をいつ、韓国側に返還するか」という質問とほぼ同じですが、答は「早ければ2019年秋、遅くとも2022年5月」です。「現状から見て」との但し書きが付きますが。
 「早ければ」の方は韓国各紙が「2019年8月に実施する米韓合同の図上演習で初めて韓国側が司令官を、米軍側が副司令官を務める。この演習で韓国軍が自立できるかを検証する」と報じているからです。「検証」が終われば、返還を妨げるものはなくなります。
 「遅くとも」の方は「2022年5月までの文在寅大統領の任期中に戦時作戦統制権を返還する」と米韓が約束しているからです。
 撤収時期は北朝鮮の非核化により左右されるでしょう。トランプ政権は米軍撤収、あるいは米韓同盟の廃棄を非核化との取引カードに使うつもりです(「米韓同盟消滅」第1章第1節「米韓同盟を壊した米朝首脳会談」参照)。
 ただそれは、北朝鮮が非核化に素直に応じた時の話。いつまでたっても応じない場合、あるいはICBM(長距離弾道弾)の試射などの挑発に出た場合は、北の攻撃にさらされる一方で攻撃能力に乏しい陸軍を撤収したうえで空爆、ということになる可能性が高い。つまり、先制攻撃を実施するケースです。



イランへ濃縮ウランを密輸? 
――米朝対話が一応続いているのに「先制攻撃」とは……。

鈴置:水面下では緊張が高まっています。北朝鮮がレッド・ラインを踏み越えた――国連制裁を破ったからです。まずは5月の2回にわたる弾道ミサイル発射。
 もっと米国が神経を尖らせているのが、濃縮ウランとプルトニウムなど核兵器の素材を中国経由でイランに輸出したとされる事件です。制裁で経済難に陥った北朝鮮が外貨稼ぎのため、密輸に手を染めたと言われます。
 メディアではほとんど報じられていませんが、安全保障関係者とコリア・ウォッチャーの間では「常識」になっています。
 核関連物資の輸出も核・ミサイル実験と並ぶ国連制裁の対象です。最近、米国がイランに対し強硬になったのもこれが一因と見られています。
 安倍晋三首相が6月12日からイランを訪問するのと関係するのかもしれません。イランと北朝鮮は核とミサイルを共同開発していると見なされてきました。北朝鮮の非核化にはイランへの説得がカギとなりうるのです。

――そもそも、先制攻撃は許されるのですか? 
鈴置:いいご質問です。それは米朝の間で緊張が高まった2016年頃にかなり突っ込んで議論されました。説明にはやや時間がかかります。
――では、その話は次回に。

(次回は6月12日掲載予定)

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集