日本の敵速報

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【#ダイヤモンド・オンライン】韓国・文大統領が日本に報復できない理由、元駐韓大使が解説

● 文大統領はリーダーシップを取らない
 文大統領政治の数ある特徴は、拙著新刊『文在寅という災厄』でも述べたが、以下の3つに集約できると考えている。

 1、 現実を直視せず自分に都合のいいように解釈する
 2、 国益を考えず原理原則にこだわる
 3、誤りを認めて謝罪せず常に自分が正しいと主張する
 さらに今回目立ったことは、責任回避である。韓国の文在寅政権を批判する際によく言われることは、文大統領とその側近グループは自分たちが評価されることには前面に立って取り組むが、都合が悪くなると官僚に責任を負わせて知らんぷりするということだ。
 日本が1日、フッ化ポリイミドエッチングガス(フッ化水素)、レジストの3品目について、輸出管理を包括的な許可から個別審査に切り替えると発表してからも、文大統領はその対応を洪楠基(ホン・ナムギ)経済副総理以下の経済チームに任せ、自らは米朝会談以降の北朝鮮との融和に取り組んできた。
 この問題が日韓経済関係を揺るがす事態に発展する懸念が高まったところで、文大統領はようやく重い腰を上げた。しかし、自ら主宰した会議の結論は、経済関係の閣僚たちが出した結論と何ら変わるものではなく、大統領としてこの問題にどのように取り組むのかは、輪郭さえも見えてきていない。

● 日本の輸出規制措置は 韓国経済を直撃
 日本の対韓国輸出規制強化によって、韓国の半導体業界が打撃を受けることは、韓国経済の致命傷になりかねない。韓国の国内総生産GDP)の37%は輸出が占め、半導体は輸出の20%を占めている。世界の半導体市場でサムスン電子とSKハイニックスは50%を超えるシェアを持ち、ディスプレーはLGディスプレイサムスン電子でシェア30%を占めている。

 文大統領は8日に青瓦台で主宰した首席秘書官・補佐官会議で、この問題は前例のない非常事態と認めた上で、「韓国企業に被害が実際に発生する場合に、わが国政府としても必要な対応を取らざるを得ない」「日本側の措置撤回と両国の誠意のある協議を求める」「政府は企業とともに被害を最小限に抑える短期的な対応と処方箋を抜かりなく講じる」と述べた。この問題で文大統領が初めて表明した立場だ。

 だがこれに対し、世耕弘成経済産業相は、「今回の措置は輸出管理を適切に実施する上での必要な日本国内の運用見直し」であり「協議の対象ではなく、撤回も全く考えていない」と直ちに拒否した。
 文大統領が前面に立ち、日本への対応を指揮するようになったのは、韓国政府にとって一歩前進ではある。しかし、その中身に全く新味はなく、経済官庁がまとめた案を基に指示しただけだった。

● 財界も見放した 文大統領の対策
 文大統領は、「短期的な対応と処方箋を抜かりなく講じる」と述べたが、韓国政府が今検討している対策は、好意的に見ても中長期的対策であり、当面の効果は期待できない。その間に韓国経済が被る損失は計り知れない。
 10日に白芝娥(ペク・ジア)在ジュネーブ代表部大使は、WTOの商品貿易理事会のその他の議題において、「日本は政治的動機で貿易制限措置を取った」「韓国企業だけでなく世界の貿易にも否定的な影響を及ぼす」「日本側は国際的な貿易ルールに違反しており、措置の撤回を強く求める」と訴えた。これに対し日本の伊原在ジュネーブ代表部大使は「規制措置ではなく、安全保障に関する貿易管理上の見直し」であり、「韓国を簡素化手続きの対象から通常の手続きに戻したものでありWTOの協定上問題はない」とその訴えを退けた。韓国がWTOに提訴したとしても、結論が出るまでには数年要するといわれる。
 文大統領は、「部品、素材、装備産業の育成を最優先事項の一つとして企業を支援する」とし、このため毎年予算を1兆ウォン割り当てるという。

 韓国政府はこれに加え、兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長を米国に派遣して、日韓間の問題の仲裁を要請した。兪本部長は米国の主要通商当局者と会い、日本の措置が国際ルールに違反する理由や、アップル、クアルコムなど米国企業に与える被害の可能性などを説明すると見られている。だが、米国が耳を貸すかどうかは分からない。米国は日韓で問題になったレーダー照射事件に介入してこなかったからだ。米国政府にとってみれば、日韓の対立は面倒なので介入したくない、というのが本音であろう。

 韓国の財界はこうした状況に焦りを感じ始めており、独自に半導体素材の調達に乗り出している。サムスンとSKハイニックス、LGは第三国での在庫確保に乗り出しており、台湾や欧州などの第三国で製造している日本企業の製品を調達すべく、文字どおり東奔西走している。特にサムスンの李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は10日、文大統領が主宰する財界人との会合を欠席してまで日本出張に乗り出している。もともと財界との重要な意見交換は、各企業個別に行われなければ本音は聞けない。今回のような会合は、文大統領の「自分は努力している」という国民向けのアピールであろう。財界は、もはや文大統領は頼れないということか。

● 韓国は日本に対して 貿易政策で報復できない

 そもそも日本の輸出管理の措置は、韓国が主張するような「元徴用工」問題への報復として取ったものではない。あくまでも、日本企業が韓国に輸出した上記3品目の取り扱いについて「不適切な事案」があったためで、輸出に当たって個別の審査と許可を経るよう求めることにしただけだ。

 ただ、日本政府は何が「不適切な事案か」は説明していない。西村康稔官房副長官は、韓国とは「輸出管理をめぐり3年以上十分なコミュニケーション、意見交換が行われていないという点も背景にある」と指摘している。

 今年5月に朝鮮日報が報じたところによれば、韓国政府が作成したリストで、2015年から19年にかけ戦略物資が韓国から流出した不正輸出案件は156件に上るといわれる。韓国はこうした不正輸出を摘発しているというかもしれないが、それではなぜこれまでそれを公表しなかったのか、日本との適正な貿易管理のための協議に応じなかったのか。これでは文政権は日本との情報の共有を回避し、不適切事案について隠ぺいしようとしていると受け取られても、やむを得ない状況である。

 文大統領は北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長の機嫌を損なわないよう、北朝鮮が嫌がることは極力避けてきた。韓国船が北朝鮮への石油の瀬取りへの関与が疑われても、その調査に及び腰だ。その上、北朝鮮産の石炭をロシア経由で輸入した韓国企業もかばっている。日本が個別許可を求めた3品目は、化学兵器やレーダーなど、軍事転用され得るものであり、それが北朝鮮に流れたとしたら、日本や東アジアの安全保障に甚大な影響を与えかねない。こうした物品の輸出管理を適正に行うことは日本政府の国際的義務であり、WTO違反とは全く関係のないことだ。

 文大統領は、韓国企業に被害が及ぶ場合には必要な対応を取らざるを得ないと述べている。しかし、文大統領はこれまで政府の無策や道徳性を批判されることを嫌い、マスコミや司法当局を締め付けてきたような人物だ。そもそも、日本の報復措置が発動されると指摘されて久しいにもかかわらず、無為無策でここまできた。今、打てる手があれば、今ごろそれを発表しているはずだろう。

● 手詰まりの韓国 日本への報復は「火に油」

 韓国には、貿易面で日本に報復し、効果を期待できる方策は少ない。半導体の日本向け輸出を止めるとしても、韓国の半導体の輸出先は8割が中国、日本は1割だ。しかも、サムスンの連結営業利益は4~6月期で対前年度比56%減少した。大口顧客向けに価格を大幅に引き下げたのが原因といわれる。その上、製品在庫は通常の3倍の3ヵ月分に膨らんでいる。こうした状況を見ても、韓国が半導体の輸出を止めることは難しい。韓国の得意な欧米向けハイエンドテレビの液晶パネルも、第三国で代替可能な製品が多い。

 日本の自動車関連の輸入を差し止めるという策も考えられるが、これは火に油を注ぐことになるだろう。日本が韓国を「ホワイト国」指定から外すという追加措置が待ち受けており、貿易戦争が激化するだけだ。「外交的解決に向けても努力していく」と述べたのはこのためであろう。

 韓国の経済は、日本の明治維新をモデルとして発展してきた。今般の日本の輸出管理措置は、韓国製造業がいかに発展したとはいえ、構造上日本に多くの面で依存していることを露呈した。韓国財界は、これ以上日本との経済関係を悪化させたくない、というのが偽らざる本音なのではないだろうか。

● 日本に対する無策な文政権に 国民感情は反発も

 文政権は、日本が輸出管理を個別審査に変えたことを、対抗策で止める手段がなかなか見当たらない。

 韓国では、中小商人自営業者総連合会が、日本製品の販売を中止すると発表した。日本製品不買運動、日本への旅行自粛運動の影響も出始めている。韓国の一般国民は冷静であっても、国民感情を刺激しようとする一部の人々の動きがあり、彼ら・彼女らは止められない。感情的な反発の連鎖につながる恐れがある。

 そのため、日本政府は韓国の国民感情をいたずらに刺激しない方が得策である。輸出管理措置として、これら3品目の許可制を導入したことは、北朝鮮の脅威という安全保障上の観点が絡むため、やむを得ない。ただ、日本政府は導入に当たり、文大統領がG20で安倍総理との会談もできずに帰国した2日後に突如公表した。韓国国民はこれを「後ろからいきなり殴られた」と解釈し、日本への国民的反発を強めることが懸念される。

 韓国政府にとっても韓国国民の反日感情は両刃の剣だ。必ずしも韓国政府に味方し、後押しするものばかりではないことを肝に銘じるべきである。文政権に日本に対抗する有効な手段があれば、これを後押しするだろうが、有効な手段がない場合には、逆に文政権の無為無策を批判する運動にも発展しかねない。

 日韓双方で国民感情がぶつかり合うことは、日韓の対立を深め、泥沼化する方向へ導くだろう。

● 問題解決の道は、韓国政府が 問題の本質を理解し対応すること

 こうした両国の争いを解決する道としては、両国の首脳が会談して忌憚のない意見交換をするのが最善の道である。しかし、問題の本質を避け、独善的な道を歩む文大統領と会談して、成果が上げられるだろうか。文大統領には、この問題の本質をもう一度考えてもらいたい。

 まず、この問題は輸出管理の問題であること。金正恩委員長のご機嫌ばかりとり、北朝鮮の制裁破りを黙認し、場合によっては助長する政策を止め、北朝鮮の核ミサイル、生物化学兵器の開発を制止する姿勢を明確にするべきだ。そして韓国企業で北朝鮮に加担する企業があれば、これを取り締まることである。

 今回の問題は、「元徴用工」問題への報復ではない。しかし、これまで日本が韓国をホワイト国として遇していたのは、韓国と戦略的価値を共有し、信頼できる友好国として扱ってきたからである。韓国が日本との信頼関係を回復し、再び友好国となるには、1965年の国交正常化の際に合意した事項を、誠実に順守する姿勢が重要になってくる。

 今回の争いを「雨降って地固まる」としたいものである。
 (元・在韓国特命全権大使 武藤正敏