日本の敵速報

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【#アスキー】アップル「韓国離れ」か? 日韓問題で注目

日本の韓国に対する輸出管理強化がアップルにも影響。アップルはディスプレー調達先を韓国から中国や日本などに変更するとも噂されている。

iPhone有機ELディスプレーは韓国からの調達に依存している

 アップルは中国での組み立てを最終工程とする世界規模のサプライチェーンを構築していることで知られています。そのため、アジアを中心とした企業からパーツを調達し、極力在庫を持たない適時生産をしてきました。
 しかしこうした体制は、特に東アジア諸国や米国の関係性が良好であることが前提でした。この連載でも米中貿易問題の影響について触れてきましたが、米中問題について既にアップルは動き始めています。

 iPhoneの製造をインドへ、AirPodsの製造をベトナムへと分散させる計画だと日本経済新聞が伝えました。
 
 アップルは最終的な製品をそれぞれ台湾・鴻海精密工業フォックスコン)、中国・歌爾声学(ゴーテック)で組み立てていますが、これらの企業が中国外に製造拠点を持つ形で、15~30%の製造を中国外に分散する施策を採っています。
 
 しかし新たな火種は、日本の韓国に対する輸出管理強化、いわゆるホワイトリストからの除外の問題です。
 
 この問題についてひとつ疑問なのは、韓国が日本から戦略物資を輸入できなくなったわけではないにもかかわらず、日本や韓国のメディアでは「規制」という言葉が使われている点です。
 
 中国をはじめとするアジア諸国はそもそもホワイトリストには入っておらず、通常通りの輸出手続きを取っています。そのため韓国も同じように手続きを取ればいいだけのはず。もちろん今まで優遇されていた扱いが変わる点が承服しかねるということなら分かるのですが。
 
●日韓版「貿易戦争」も既に情報戦に
 米国TechCrunchは先週、「W(hy)TF are Japan and South Korea in a trade war?」 を掲載し、米中間とは異なる、新たな日韓間の貿易戦争の文脈を説明しています。
 
 今回の輸出管理厳格化によって、メモリー有機ELディスプレーなどの製造に影響が出ることになりますが、サムスンDRAMの4割、NANDフラッシュの35%のシェアを誇り、SKハイニックスもDRAMの31%のシェアを占め、韓国でのメモリー生産が滞れば、世界のテクノロジー産業に影響が大きいことを指摘しています。
 
 記事のサブタイトルに「第二次世界大戦の残虐行為がいかにして5Gスマートフォンを遅延させるか」という文言がつけられており、いわゆる徴用工問題で日本企業の賠償判決に端を発した日本の制裁行為である、という主張を展開しています。
 
 日本は「輸出管理強化は安全保障上の問題で、徴用工問題の制裁と関連性はない」との説明をしていますから、米TechCrunchの記事は韓国の主張をそのまま採用しています。米国の大手テクノロジーニュースが、日本の主張に触れずにこの問題を伝えている点には、注意しておく必要があります。
 
●アップルの動きに注目が集まる
 その一方で、アップルなどの企業はサプライチェーンの組み替えを急いでます。米中問題で既に手を入れ始めているところに、日韓問題も発生し、さらに調達先についての調整が必要になってきました。
 
 特に、有機ELディスプレーは100%韓国に依存していることから、この問題が長引くと、iPhoneの主力製品向けのディスプレー調達に支障が出る可能性があります。そこで、調達先を変更しようという動きも観測されるようになりました。
 
 これまでiPhone XS有機ELディスプレーはサムスンやLGといった韓国メーカーのパーツが利用されてきましたが、Digitimesは中国のBOEに乗り換えるとの見方をしています。
 
 すでにアップルとBOE有機ELディスプレー供給で昨年から話をしていると伝わってきますが、これはサムスンにほぼ独占されていることから価格が高止まりしていることを嫌気した動きだとみられてきました。しかし今回の供給懸念から、アップルはBOE採用を急ぐのではないか、と見られています。
 
ジャパンディスプレイにも白羽の矢が…
 もう1社、有機ELディスプレーの供給で白羽の矢が立ったのがジャパンディスプレイです。
 
 ジャパンディスプレイはご存じの通り、経営難に陥っている状況で、約720億円の調達をしていますが、Appleは15%の資金を注入することが分かりました。ロイターはこれを「Apple Care」と紹介し、以降の資金調達へのお墨付きを得たといいます 。
 
 こちらはスマートフォン向けのサイズのパネルの製造にこぎ着けていない状態ですが、2019年モデルのApple Watchのパネルを供給することになりそうだとしています。
 
 そもそもスマートフォンで競合するサムスンやLGからの調達率を下げていくという基本的な戦略を採ってきたアップルにしてみれば、日韓間の問題がなくても、これらのメーカー以外のディスプレーの採用が現実的になった時点で、そちらにシフトすることは分かっていたことと言えます。
 
●マイクロLEDへの動向も注目
 しかし有機ELディスプレーも今後永続的に続く技術ではないと言えます。アップルを含む各社は、微細なLEDを敷きつめてディスプレーとする「マイクロLED」に注目が集まっています。
 
 マイクロLEDは自発光でカラーフィルターや偏光板などを必要としないため、輝度、コントラスト、応答速度、消費電力、寿命という、これまでのディスプレーの不満点を解消する表示技術です。
 
 しかし単純に1画素あたり3色のLEDを敷きつめるとなると製造に膨大な時間がかかるため、ウエハー上に3色のLEDを作ってそのまま利用する製法などが検討されています。
 
 こうした次世代技術のディスプレーが登場するのはまだ先となりますが、たとえば有機ELディスプレイでも現在の蒸着式から印刷式での製造に変わり、大型のパネルの価格が下がってくると、iPhoneだけでなくMacへの採用が進むことも期待できます。
 
 特にMac向けにはこれまで、iPhoneと同様に高精細・高色域のRetinaディスプレーを液晶で実現してきましたが、iPhone有機ELへ移行し、コントラスト比100万:1を実現するようになりました。
 
 このコントラスト比にマッチするプロ向けディスプレーとして、Appleは2019年6月のWWDCで「ProDisplay XDR」という、100万:1のコントラストを実現する6K液晶ディスプレーを発表しました。
 
 しかし価格は50万円を超え、発熱量から同じ輝度を実現するディスプレーを現在のデザインのiMacMacBook Proに搭載することはあまり現実的ではない、と考えます。有機ELやマイクロLEDの技術は、引き上げられたアップルのディスプレーのスタンダードを実現するために必要といえます。
 
 アップルは米中問題、日韓問題によるサプライチェーンの調整をすることと、同社の製品のスタンダードを高めることを同時並行でやっていきます。そのため、意外なほどに臨機応変な対応を、世界最大規模でとっていくことになるでしょう。
 
 しかし、繰り返しになりますが、やはり国際関係が安定していることが、アップルにとっても、サプライヤーにとっても、同社の製品を待つ消費者にとっても、最も好ましい環境であることは間違いありません。
 
筆者紹介――松村太郎
 
 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
 
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
 
文● 松村太郎 @taromatsumura