日本の敵速報

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【#デイリー新潮】「四世紀ぶりの孤立」を招いた文在寅、日本と北朝鮮から挟み撃ち

 文在寅ムン・ジェイン)大統領に元気がない。日本に対する罵倒もトーンダウンした。北朝鮮に侮辱されても揉み手するばかり。「外交の天才」を自認していたというのに、どうしたのか。韓国観察者の鈴置高史氏が「韓国の孤立」を読み解く。

また、日本にケンカを売った韓国
鈴置:韓国がまた、日本にケンカを売りました。国民年金公団の理事長が「日本の戦犯企業の株は売り払うことを検討する」と宣言したのです。

 キム・ソンジュ理事長がFT(フィナンシャル・タイムズ)の取材に答え、語りました。FTの「Korean pension fund reviews Japan investments over ‘war crimes’」(8月12日)から、発言部分を引用します。

・“We are in the process of adopting a new guideline of responsible investment and we are reviewing whether Japanese ‘war crime companies’ should be excluded from our investment list,” Kim Sung-joo, NPS chair, told the Financial Times in Seoul.

 「戦犯企業」とは韓国での呼び方で、第2次世界大戦中に当時の朝鮮人を徴用したとされる日本企業を指します。

2018年10月30日、韓国の最高裁判所が「戦犯企業」である新日鉄住金(現・日本製鉄)に対し、自称・元徴用工に慰謝料を支払うよう命じました。韓国の裁判所は三菱重工業など「戦犯企業」に相次ぎ、同様の判決を下しています。

これに対し日本政府は「日韓請求権協定で解決済みの問題だ」と強く反発し、韓国政府に「国際法違反の状態の是正」を求めています。

逆襲呼ぶ「日本株売り」
――日韓関係悪化の原因の一つですね。
鈴置:その通りです。韓国では、国民のカネを運用する国民年金公団が「戦犯企業」の株を保有すべきではない、との声が出ていました。そうした空気の下、キム・ソンジュ理事長は「売却を検討中」と語ったのです。
 この発言に飛びあがって驚いたのが、保守系紙でした。中央日報は翌8月13日の社説「政権側は大統領の『感情的な対応の自制』を無視するつもりか」(韓国語版)で厳しく批判しました。理由を説いたのが以下の部分です。要約しつつ引用します。

・韓国政府認定の戦犯企業は299社ある。国民年金はそのうちの75社に、1兆2300億ウォン(約1082億円)を投資している。三菱、トヨタ、住友、日立、東芝など日本有数の企業が含まれる。
・これら企業への投資を撤回、あるいは中断する場合、日本との葛藤を金融・投資分野に拡大することになろう。日本の公的年金(GPIF)は韓国資本市場で約7兆ウォン(約6200億円)投資している。
・これらの資金が韓国から引き揚げられれば、他の外国からの資金はもちろん、その他の領域での動きまでも刺激しかねない。ただでさえ困難に直面している我が国の経済が、新たな不確実性までを甘受する必要はない。

 朝鮮日報の社説「国民年金を収益率向上以外の目的で使うな」(8月15日、韓国語版)も「金融分野での日本の反撃を呼ぶ」と、同じ理由で理事長発言を批判しました。
・もし、韓国の国民年金が(日本企業から)投資資金を引き揚げれば、韓国企業に投資中の日本の公的年金も同じ方式で報復に出るであろう。

財閥経営に介入する国民年金
――キム・ソンジュ理事長は本気で言っているのでしょうか。
鈴置:韓国では「本気」と受け止められました。この人は経済の専門家ではありません。盧武鉉ノ・ムヒョン)、文在寅両氏の選挙運動に参加し、今のポストを得た左派の政治家です。
 2017年11月の理事長就任以来、キム・ソンジュ氏は国民年金が大株主であることをテコに、財閥の経営に介入し始めました(「文在寅で進む韓国の『ベネズエラ化』、反米派と親米派の対立で遂に始まる〝最終戦争〟」参照)。
 「脅すことで財閥を政権の支配下に置く狙い」と韓国の保守は見ています。「財閥国有化の一歩」と警戒する人もいる。もちろん「財閥叩き」により、国民の拍手喝采を得る狙いもあるでしょう。
 キム・ソンジュ理事長は、文在寅大統領の喜びそうなことなら、結果など考えずに何でもやると見られている。保守系紙が「そんなバカなことをすれば、資本逃避が起きるぞ」と慌てて止めに回ったのも当然なのです。

韓国企業まで韓国脱出
――「日本株売り」宣言に、大統領は喜んだのでしょうか。
鈴置:普通の状態なら「よくやった」と頭をなでたでしょう。しかし今は緊急事態です。
 米中経済戦争のあおりを受け、韓国株とウォンは売られています。それに日韓経済戦争が拍車をかけました。韓国では、日本との戦争を始めた文在寅政権に対し批判が高まっています(「韓国株・為替ともに急落 日韓経済戦争の『戦犯』文在寅に保守から『やめろ』コール」参照)。

 韓国証券市場で外国人は7月31日以来、連日、売り越しています。8月19日には「13営業日連続」の記録を作りました。
 KOSPI(韓国株価総合指数)は8月2日に心理的抵抗線とされた2000を割り込んだ後は、その水準を回復できないままです。
 ウォンも8月5日に「防衛線」とされてきた1ドル=1200ウォンをあっさり突破。1210ウォンを挟んで動く展開になっています。
 朝鮮日報は社説「米中経済戦争が拡大、より深刻な事態に」(韓国語版、8月10日)で「韓国企業までが韓国から逃げ出し始めた」と指摘しました。
・すでに証券市場と為替市場から外国人が離脱する兆しが見えている。韓国経済が直面するリスクを避けようと、海外に移る企業も増えている。
 この社説はそれ以上説明していませんが、工場を海外に移転する韓国企業が増えていることを指していると思われます。

慌てて前言を撤回
――韓国企業まで逃げだすとは……。
鈴置:そんな時に、キム・ソンジュ理事長が韓国の弱点である金融市場を日本との新たな戦場に設定してしまったのです。その「無知」と「過剰忠誠」には青瓦台(大統領府)も頭を抱えたと思われます。
 FTの記事が出た翌8月13日の夕刻、左派系紙のソウル新聞に「独自ダネ」と称してキム・ソンジュ理事長のインタビュー記事が載りました。「国民年金理事長 『日本の戦犯企業への投資制限は絶対にあってはならぬこと』」(韓国語)です。

――180度、変わりましたね。
鈴置:「日本株売り」宣言の軌道修正を図ったのです。青瓦台から命じられた可能性が高い。キム・ソンジュ理事長は、ソウル新聞には「韓国の国民年金が日本から資金を引き揚げれば、日本も同じように動くかも知れず、そうすると韓国がより損をする」と説きました。
――国民年金の理事長がそんなことにも気づかず、「日本株を売る」と宣言していたということですか……。
鈴置:この政権は経済を全く知らない人が経済を担当するので危ないこと極まりありません。空気が読めない人でもあるのでしょう。
 文在寅政権は8月5日から対日姿勢を微妙に変えていました。というのに、キム・ソンジュ理事長はその後のFTとのインタビューで強硬姿勢を打ち出してしまったのです。
 韓国がいわゆる「ホワイト国」から外された8月2日、文在寅大統領は日本を「盗人猛々しい」と猛烈に非難しました。
 しかし、強硬姿勢は損になると判断したと思われます。「日本との勝てない戦争を始めた」戦犯に認定され、「やめろ」コールに見舞われたためです(「韓国株・為替ともに急落 日韓経済戦争の『戦犯』文在寅に保守から『やめろ』コール」(8月5日)。

GSOMIAで米国から警告
 そこで文在寅大統領の日本に向けた発言は8月5日を期に、急におとなしくなりました。米国から「警告」があったのかも知れません。
 東亜日報は「米国務省の局長級の高官が8月上旬に訪韓し、日本とのGSOMIA(軍事情報包括保護協定)を破棄しないよう求めた」と報じました。「米、韓国に『軍事協定の継続を』要請」(8月15日、日本語版)です。
 文在寅政権は、米国を味方に付けて日本を叩く作戦でした。日韓GSOMIA破棄はその最強カードのつもりだったようですが、逆に米国からは「そんなバカなことするな」と警告されてしまったのです。
 文在寅大統領の8月15日の光復節演説に、激しい対日批判の文言が入らなかったのも、不思議ではないのです。

――日本の新聞でも「軟化」が話題になりました。
鈴置:もちろん、文在寅政権が基本的な対日姿勢を変えたわけではありません。金融という自らの弱点に火が燃え移りかけたので、それを消すため「問題の鎮静化に動くフリ」をしているだけです。
 その証拠に、韓国外交部は英独仏伊の4カ国に外交官を送り、日本の輸出管理強化の不当性を訴える、と中央日報は報じています。
「韓国外交部、欧州に外交官を派遣して日本輸出規制の不当性を伝達」(8月14日、日本語版)です。日本に対しては「話し合おう」と言いつつ、世界では日本を批判して回っているのです。

「犬」扱いされた青瓦台
――要は「苦渋の光復節演説」だったのですね。
鈴置:ええ。「苦渋」と言えば、対日だけではなく、北朝鮮に関しても「苦渋」の演説だったのです。北朝鮮は短距離弾道ミサイルと多連装ロケット砲を撃ちまくっています。

 最近の「ミサイル挑発」は韓国への恫喝が目的です。射程が短いことから、トランプ(Donald Trump)大統領も黙認の姿勢を明確にしています(「日・ロ・中・朝から袋叩きの韓国 米韓同盟の終焉を周辺国は見透かした」参照)。
 露骨な「韓国孤立作戦」でもあるのです。というのに8月15日、光復節演説で文在寅大統領は北朝鮮に対話を訴えました。
 翌8月16日、北朝鮮から直ちに「回答」が来ました。韓国時間・午前8時過ぎに北朝鮮は2発の短距離弾道ミサイルを発射。7月25日以降の22日間で、6回目の発射となりました。
 さらに、対韓国窓口機関である祖国平和統一委員会が「私たちは南朝鮮(韓国)の当局者らとこれ以上語ることもなく、再び対座する考えもない」との報道官談話を発表したのです。
 文在寅大統領を嘲笑するくだりもありました。以下、「我が民族同士」の「祖平統代弁人、朝鮮に言い掛かりをつけた南朝鮮当局者の妄言を糾弾」(8月16日、日本語版)から、文章を整えて引用します。

南朝鮮でわれわれに反対する合同軍事演習が盛んに行われている時に、対話の雰囲気だの、平和経済だの、平和体制だのという言葉を、いったいどの面をさげて吐いているのか。
・公然と北南間の「対話」をうんぬんする人の思考が、果たしてまともなのか、疑わしい。実にまれに見る、厚かましい人である。

――文在寅大統領の人格攻撃に及びましたね。
鈴置:これはまだ、おとなしいほうです。「朝鮮外務省米国担当局長、軍事演習のため北南接触が困難と強調」(8月11日、日本語版)では青瓦台は「怖気づいた犬がもっとも騒がしく吠える」と、犬扱いされていました。

文在寅の「食い逃げ」に怒る金正恩
――北朝鮮はなぜ、こんなに怒っているのでしょうか。

鈴置:韓国の裏切りが原因です。2018年6月の史上初の米朝首脳会談は、両国の情報機関が水面下で交渉し実現にこぎつけました。
 ここに韓国が割り込んで入り、自分が仕切ったフリをしました。もし、初の米朝首脳会談に関係しなければ、「自分たちの運命がかかった会談にも我々は蚊帳の外だ」との国民の不満が爆発しかねなかったからです。
 北朝鮮もこれを受け入れ、文在寅政権に仕切ったフリをさせてやった。見返りにはドルを貰うとの約束があったに違いありません。
 なぜならその後、文在寅政権は米国や日本、欧州の反対を押し切って「ドルの送金パイプ」である開城工業団地金剛山観光開発を再開しようとしたからです。しかし、トランプ政権の拒絶により送金計画は頓挫しました。
 2019年4月11日のワシントンでの米韓首脳会談が実質2分間で終わってしまったのも、文在寅大統領が開城工業団地などの再開要求を持ち出すのを防ぐためでした(「金正恩文在寅を〝使い走り以下〟の存在と認定 韓国『ペテン外交』の大失敗」参照)。
 さらには、文在寅政権は「金正恩キム・ジョンウン)政権の使い走り」「北朝鮮核武装を幇助する危険な政権」と世界から見切られました。
 文在寅大統領も動きが取れなくなりました。3月1日の「3・1節演説」では「開城工業団地金剛山観光開発の再開」に言及しました(「米国にケンカ売る文在寅北朝鮮とは運命共同体で韓国が突き進む〝地獄の一丁目〟」参照)。
 しかし8月15日の「光復節演説」では一切触れなかった。そこで北朝鮮は「食い逃げ」された、とさらに怒ったのです。

ドルを寄こさない韓国とは対話せず
――なるほど! 「食い逃げ」ですか。

鈴置:北朝鮮から漏れてくる情報によれば、金正恩委員長は米国との首脳会談に応じることで韓国からドルを得るつもりだった。しかし韓国は約束のドルをくれないし、米国は経済制裁を緩めない。
 北朝鮮の経済は苦しくなる一方で、金正恩政権への不満が高まっている。金正恩政権は韓国に「早くドルを送れ!」となりふり構わず叫ぶしかないのです。

 先に引用した「祖平統代弁人、朝鮮に言い掛かりをつけた南朝鮮当局者の妄言を糾弾」(8月16日、日本語版)には、北朝鮮の憤まんと焦りが顔をのぞかせています。朝鮮語特有の言い回しが残っていますが、そのまま引用します。

・歴史的な板門店(パンムンジョム)宣言の履行が膠着状態に陥り、北南対話の動力が喪失されたのは全的に南朝鮮当局者の恣行の所産であり、自業自得であるだけだ。
南朝鮮当局が今回の合同軍事演習が終わった後、何の計算もなしに季節が変わるように自然と対話の局面が訪れると妄想しながら今後の朝米対話から漁夫の利を得ようと首を長くしてのぞいているが、そのような不実な未練はあらかじめ諦める方がよかろう。

 「約束通りにドルを寄こさない韓国」を非難したうえ「再び対座する考えもない」との結論につなげたのです。

新羅も避けた「南北挟撃」
――韓国と北朝鮮の関係は完全におかしくなっているのですね。

鈴置:注目すべきはそこです。両国は対立関係に戻りました。文在寅政権の「和解」プロパガンダに騙されてはいけません。

 一方、韓国は日本とも厳しく敵対しました。要は、韓国は北側の国とも南側の国とも対立し、挟撃――挟み撃ちされる境遇に陥ったのです。

 朝鮮半島の国家は本能的に、国の滅亡に直結する「南北挟撃」を避けてきました。日本と敵対していた新羅も、高句麗や唐の力が強くなると、対日関係の改善に力を注ぎました。朴正煕(パク・チョンヒ)政権の韓国も、北朝鮮に対抗するため日本と国交を正常化して手を握ったのです。

 どの国も「挟撃」状態に陥ることは避けようとしますが、ことに韓国人には苦い記憶があります。李氏朝鮮は16世紀末の文禄・慶長の役で日本に攻め込まれ、国が極度に疲弊。それが癒える間もなく今度は清と戦い、滅亡寸前まで行きました。
 そんな「民族の記憶」があるのに、文在寅政権は「南北挟撃」の状態を創り出してしまった。四世紀ぶりです。

 本来なら同盟国である米国が助けてくれるべきところです。しかし、文在寅政権は米国よりも中国の言うことを聞く。核武装を続ける北朝鮮にカネを送ろうとする。そんな韓国を助けるほど、米国はお人よしではありません。

「島国一族」から蔑み
――北朝鮮にすれば「しめた!」という感じなのでしょうね。
鈴置:北朝鮮も「孤立した韓国」をからかっています。「朝鮮外務省米国担当局長、軍事演習のため北南接触が困難と強調」(8月11日、日本語版)では「米朝蜜月」を誇ってみせました。
米大統領までわれわれの通常兵器開発試験をどの国でも行うたいへん小さなミサイル試験だと言って、事実上、主権国家としてのわれわれの自衛権を認めた。
「祖平統代弁人、朝鮮に言い掛かりをつけた南朝鮮当局者の妄言を糾弾」(8月16日、日本語版)では、文在寅大統領の光復節演説を評するなかで「日本の輸出管理強化に手も足も出ない韓国」をあざ笑いました。文章を整えて引用します。

・島国一族から受ける蔑みを晴らすための明確な対策も、崩壊する経済状況を打開するこれといった方案もなしに弁舌を振るった。
 お分かりと思いますが、「島国一族」とは日本人の蔑称です。

左派からも文在寅批判
――これだけバカにされて、韓国人は怒らないのでしょうか。
鈴置:保守は烈火のごとくに怒っています。北朝鮮に対してだけではありません。「犬」扱いされても、ミサイルやロケット砲を連日のように撃たれても、対話路線を掲げる文在寅政権に対して、です。

 保守政党保守系紙は、ことあるごとに文在寅政権の弱腰を非難します。興味深いのは、左派からも文在寅政権への不満が漏れ始めたことです。
 例えば、8月16日の「祖平統代弁人、朝鮮に言い掛かりをつけた南朝鮮当局者の妄言を糾弾」に対し、左派の少数野党である正義党は「我が政府も、もう少し強いメッセージで北を対話に引き出すべきだ」と論評しました。

 文在寅政権を支持していた人々も「悪口を言われっぱなし」「ミサイルを撃たれっぱなし」の状態にフラストレーションを高めています。彼らと話していても、ツイッターなどを覗いても、それがはっきりしてきました。
 文在寅政権から支持層が離れて行く前触れなのかもしれません。この政権にとって深刻な問題になるでしょう。
 日本との経済戦争を理由に政権を批判する人も増えていますが、多くは保守層。もともと反文在寅の人たちなのです。それに加え、支持層までが批判に回ったら大変です。

「安倍よりよくやっている」
――なぜ、文在寅政権は「言われっぱなし」なのでしょうか。
鈴置:この政権の存在意義が「北朝鮮との和解」にあるからです。「言い返し」て、北朝鮮との関係が悪化すれば、過去の保守政権と何ら変わりがなくなってしまう。
 ことに、「この政権が――韓国が、対立していた米朝を仲介して歴史的な首脳会談を実現した」という神話を、国民に広めてしまった後なのです。
 政権に近い韓国人は、文在寅大統領の「外交の天才ぶり」を日本人にも誇りました。日本の専門家の中には、これを真に受け「安倍よりもよくやっている」と褒めそやす人もいました。
 北朝鮮に罵倒されようが、嘲笑されようが、文在寅政権は「天才的な仲介者」のフリを続けねばなりません。その化けの皮が剥がれたら、「我々はまたしても肝心な時に自分の運命を決められなかった」との怒りが政権に向けられるでしょう。

オンドルの上で死ねるか
――でも、米朝双方からこれだけ軽んじられているのです。自らが「仲介者」であると信じる韓国人がまだいるのですか? 

鈴置:確かに、化けの皮ははがれ始めました。でも政権としては、今さら後戻りできない。最後まで「平和を呼んだ仲介者」の演技を続けるしかないのです。傍目にはそれがいかに見苦しい猿芝居でも。

 韓国の歴代大統領の末路は哀れです。畳の上で――韓国には畳はないので、オンドルの上で死んだ大統領はいません。

 歴代政権もそれは分かっているから「とてつもない大きな成果」をあげ、それを盾に下野後の安泰を図る。

 文在寅大統領も「仲介者」の称号は、どんなにぼろぼろになっても絶対に手放さないでしょう。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集