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【#】韓国がGSOMIAを破棄しても日本が全然困らない理由【コメントライナー】

 金沢工業大学虎ノ門大学院教授、元海将・伊藤 俊幸
 8月24日、北朝鮮は、前日の韓国による日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄通告をあざ笑うかのように短距離弾道ミサイルを発射した。
 韓国メディアは、「日本では7時23分にNHKが第1報を伝えたのに対し、韓国政府の発表は7時36分だ。日本の報道の方が、韓国の発表より約10分早かった」と騒ぎ立てた。
 ◇「情報交換枠組み」ではない
 軍事情報機関に所属した者以外分からないのは当然だが、日韓ともにGSOMIAの間違った議論が多い。そもそも「軍事情報包括保護協定」とは、第三国への漏えい防止を約束した条約であり、報道されているような「情報交換枠組み」ではない。

 同盟関係にない日韓は、共有する「暗号」や「情報システム」がないため、日米間・米韓間のシステムを介する以外、リアルタイムの軍事情報交換はできない。分かりやすくいえば、米軍が所有する共通サーバーに、韓国軍と自衛隊がそれぞれアクセスする情報共有のイメージだ。

 情報の社会には、厳格な「third party rule(第三国ルール)」がある。そのため共通サーバー上で韓国には日本の情報を、日本には韓国の情報を秘匿しなければならず、米軍はわざわざ別の情報を作成し、そのサーバー上に置いてきた。

 これが日韓GSOMIA締結により、双方が自由にアクセスできるようになり、米軍も個別情報作成の必要がなくなった。

 また、日米韓や日韓の防衛首脳会談や、制服同士の情報交換会議といったFace to Faceの場でも、核やミサイルに関する軍事情報を開示しつつ深い議論ができるようになった。

 ◇欲しがったのは韓国側
 そもそも「核とミサイル」に関する日本の軍事情報を欲しがったのは、韓国軍の情報組織だった。「行われた核実験・弾道ミサイルはどんなものだったのか?」を事後分析・評価・研究するために必要だからだ。

 日米の情報だけで十分と思っていた当時の防衛省としては、この提案に積極的ではなかった。

 ところが、2010年の延坪島攻撃事案などにより、「日米韓3カ国の安全保障枠組み」で北朝鮮を抑止すべきとの認識に発展したことで、GSOMIA締結の議論が政府レベルに格上げされたのだ。

 ちなみに安全保障とは、軍事のみならず、政治・外交・経済・金融・文化などを包含した、より高いレベルの概念だ。

 ◇中・ロ・北朝鮮が高笑い
 今回の韓国によるGSOMIA破棄は、本来「日米韓3カ国の安全保障枠組み」の中核であるべき本人が、これを自ら毀損(きそん)したという意味で、とんでもないものだった。中・ロ・北朝鮮の高笑いが聞こえるようだ。

 一方、北朝鮮のミサイル発射情報は、米軍の早期警戒衛星で探知後、日韓ともに自国の対空レーダーで探知・捕捉して対処するものだ。着弾するまでの間に日韓が情報共有することはない。

 日本政府は8月24日のミサイル発射を韓国に先んじて迅速に発表した。これは「北朝鮮の短距離ミサイルは、これまでも全て独自に探知・捕捉していたが、日本の安全に直接関連しなかったから、あえて先行公表しなかったにすぎない」という意味を込め、GSOMIAが破棄されても、日本のミサイル防衛には何の影響もないということを国民にアピールしたものだ。

 (時事通信社「コメントライナー」より)

 【筆者紹介】
 伊藤 俊幸(いとう・としゆき) 防衛大学校機械工学科卒業、筑波大学大学院修士課程(地域研究)修了。海上自衛隊で潜水艦はやしお艦長、在米大使館防衛駐在官、第2潜水隊司令海上幕僚監部情報課長、情報本部情報官、統合幕僚学校長、海上自衛隊呉地方総監などを歴任。2016年より現職。専門はリーダーシップ論、安全保障、国際関係、危機管理など。