日本の敵速報

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【#ダイヤモンド・オンライン】韓国は北のミサイルに「無力」、いずれ日本へGSOMIA再開を求めてくる

 文在寅政権が破棄を表明した日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が11月に失効する。米朝の非核化協議も進まず、北朝鮮のミサイル発射実験はとどまる気配がない。協定の失効は、東アジアの日米韓の安全保障にどのような影響をもたらすのか――。協定の締結にかかわり韓国軍に太いパイプを持つ伊藤俊幸教授・元海将に聞いた。(ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)

● GSOMIA締結の契機は 韓国軍が協力を求めてきたから

 ――韓国のGSOMIA破棄表明後も、北朝鮮はミサイルの発射実験を続けていますが。

 10月2日に発射されたのは、射程が2000キロ以上の中距離弾道ミサイル北極星3型」とみられます。

 潜水艦から地上攻撃することを前提にしたミサイルですから、実戦配備されれば、日本の安全保障上の脅威になります。 ただしその潜水艦が本当に機能を発揮すれば、という前提ですが。

 夏以降、立て続けに行われた発射実験では4種類の新型短距離ミサイルが含まれていますが、これは北朝鮮国内の軍部に対するガス抜きの側面があるのではとみています。

 いずれにしても金正恩委員長が、米国との非核化交渉上も、軍事上もミサイルをカードとして使う考えは全く変わっていないということです。

 ――韓国国防相は2日のミサイル発射の際に、GSOMIAに基づく情報共有を日本に要請したと言っています。

 GSOMIAが失効したら、困るのは韓国だという軍の本音をアピールしたものでしょう。もともと軍事情報の交換は韓国軍の情報部から日本に言ってきたものですから。

 2010年3月に、北朝鮮が「天安(チョナン)」という韓国海軍の哨戒艦を魚雷で撃沈したり、11月には延坪島ヨンピョンド)に砲弾を撃ち込んで韓国軍人や住民が死傷したり、ということが起きました。

 北朝鮮は2006年頃からミサイル発射や核実験も始めていたが、2010年頃には韓国と戦争になりかねない、かなり過激ことをするようになったわけです。韓国軍だけでは北朝鮮の行動の全体の絵柄がわからないということもあり、自衛隊との協力をと言ってきたわけです。

 日本は朝鮮半島についての情報は米国よりも持っている側面があります。ただ情報交換するには、お互いが情報を他に絶対に漏らさないことが前提になります。それで、軍事情報の秘密保護の取り決めであるGSOMIAの話が出てきたわけです。

● 北朝鮮の核実験の情報 日本の方が正確に把握できる

 ――どういう情報を欲しがったのですか。

 軍の情報部門というのは、主に兵器に関する情報を収集し、分析・評価しています。例えば、ミサイルの場合、どこ製の、どういう性能のミサイルが、どういう飛行をするのかを、核実験をした場合は、どういう規模で、実験にはどういう狙い、意味があったのかなどを分析するわけです。

 例えば、北朝鮮の核実験の規模などは、爆発の際の振動を地震計などから測定するのですが、日本は振動が海を通って伝わるから、韓国よりも正確な測定ができるのです。

 とはいえ、日本と韓国は軍事同盟を結んでいません。韓国軍は米韓同盟の相手の米軍から、自衛隊の情報を得ようとしても、米軍はThird party rule(第三国ルール)により、絶対に韓国軍には情報を渡しません。この米軍の第三国ルールを越えて情報をもらうためには、韓国軍は自衛隊とGSOMIAを締結せざるをえなかったのです。

● 嫌がった日本を米国が説得 「平時」の日米韓の安全保障の枠組み

 話があった時は、防衛省自衛隊も締結には消極的でした。GSOMIAを結んでも、韓国から情報がマスコミなどに抜ける可能性がありましたし、北朝鮮に渡る恐れもありましたから。

 ただ、2010年の北朝鮮の一連の行動があって、米国の国務省国防総省では、軍事面だけでなく、政治、外交、経済なども含めた日米韓の安全保障枠組みが必要だという議論になったのです。そこで米国は日本に、締結を働きかけてきたのです。

 米軍にとっても日韓がGSOMIAを結んでいないことは不便でした。米国のシステムには、米国が収集した情報と、同盟国の日韓から得たものがまとまった形で情報が入っています。しかし情報交換する際に、米軍は、韓国軍には自衛隊から得た情報を除き、自衛隊には韓国軍からの情報を除いたものをわざわざ作成して配布しなければなりませんでした。

 米軍からすれば、配布する情報をいちいち作り直す手間が大変だったのです。

 2016年に日韓GSOMIAを締結してからは、米軍のシステムに日韓それぞれがリアルタイムでアクセスし、情報共有ができるようになりました。

 さらに、日米韓の防衛首脳会議などの当局者が会する場でも、北朝鮮のミサイル情報など軍事秘密の話ができるようになったのです。これが「日韓が直接情報交換できるようになった」と報道でいわれる本当の姿なのです。

 このように本来、GSOMIA自体は軍の情報機関同士の狭い世界の協定ですが、東アジアの安全保障という枠組みでとらえれば、日米韓防衛協力の一ピースになったということになるわけです。

 6ヵ国協議で例えれば、日米韓の3ヵ国が一枚岩になって、北朝鮮とその後ろにいる中国、ロシアの3ヵ国と対峙することで均衡を保つ、安全保障の平時の枠組みとして重要な役割を持つことになったのです。

 今回、文政権が日韓GSOMIAの破棄を言い出した時に、米国の国務省国防総省が一番怒ったのは、こうした経緯があるからです。米国にしてみれば、朝鮮半島の平時の安全保障の大事な枠組みを韓国自らが破壊するのかと、怒っている。

 一方で高笑いをしているのが、北朝鮮、中国、ロシアの3ヵ国です。

● 対日強硬姿勢で国内の支持狙う 世論を意識する青瓦台 

 ――文大統領はどうして破棄に踏み切ったのでしょうか。

 日本の韓国に対するホワイト国指定解除に対抗するということで、世論を意識した完全に政治的なものでしょう。国内の経済政策の失敗などへの国民の不満を、日本という外敵を作って不満を外に向けようという狙いもあると思います。

もともと韓国内の世論は、日韓GSOMIA締結の話が2010年頃に表面化した時から批判的でした。韓国軍の大事な情報をどうしてかつての侵略軍の自衛隊に渡さないといけないのか、というわけです。

 実際は、韓国軍が情報を欲しいのに、当初からGSOMIAに対する韓国の世論と軍の実態が誤って報道され理解されてきました。それは今もそうです。

 2012年6月、日韓の外交・防衛当局者の間でGSOMIA締結を合意していた際も、韓国側が、協定に署名する1時間前に、ドタキャンするということがありました。世論の反対が強いというので、青瓦台(大統領府)が取りやめを決めたのです。

 青瓦台は常に世論に反応し、世論をどう味方にするかばかりを考えます。GSOMIAにかかわらず、日韓の防衛協力の話は軍当局と話を進めても、青瓦台のその時々の判断でころころ変わります。

 それに文政権は北朝鮮に対しては、朝鮮民族の祖国統一ということで融和政策ですから、軍が北朝鮮の脅威を言ったところでかみあいません。さらに言えば、GSOMIA廃棄を求めている金正恩委員長に対しこびを売って南北対話を進めようという思惑もあったのでしょう。

● 困っているのは韓国軍 北の新型ミサイルの情報取れず

 ――日韓GSOMIAの破棄でどのような影響が出るのでしょうか。

 自衛隊にとって困ることは特にありませんが、困るのは韓国軍です。今回も国防大臣は国家安全保障会議の場で、最後まで反対したと伝えられています。

 今の韓国のミサイル防衛では、北の新型ミサイルの迎撃が困難になる可能性があります。このところ北朝鮮が発射実験をしているのは、朝鮮半島で戦時に使うことを想定した戦術ミサイルの新型で、飛行の後半の弾道が不規則に変化するので、迎撃が難しい。

 いまは試射の段階ですが、実戦配備されたら韓国軍にとっては死活問題です。ですから韓国軍は日本海に向けて発射されるミサイルが、どういう弾道で飛ぶのかを懸命に分析しているのですが、地球は丸いですから、韓国軍のレーダーでは、水平線の向こう側に落下するミサイルの終末の弾道がわからないのです。

 一方で、落下側に存在する自衛隊のレーダーはこれを探知します。韓国軍にしてみれば、日本から情報が一番欲しい時に、どうしてGSOMIAの破棄なのだという気持ちでしょう。

 韓国がGSOMIA破棄を表明した8月23日の翌日、北朝鮮が短距離弾道ミサイル2発を発射した際に、防衛省の発表より韓国軍の発表が26分遅れたのは、韓国側がミサイルの落下地点がわからなかったからでしょう。

 その前、7月にミサイルが発射された時に、韓国軍が自衛隊からの情報により修正したと、わざわざ発表内容を修正したとの報道がありましたが、あれも、韓国軍がGSOMIAをやめたら困ることを政権に訴えるために、韓国軍が意図的に行ったリークだと思います。

文政権の「軍軽視」の表れ
軍OBたちの不満がたまる
――文大統領は韓国軍が自衛隊の情報に依存している状況をわかっているわけでしょう。



 わかってのことだと思います。しかし文政権は軍をないがしろにしているところがあるのです。革新系の人たちから見れば、軍は保守政権のもとで自分たちを弾圧してきた組織だという思いがあるのでしょう。

 文政権発足後に最初に国軍機務司令部をつぶしたことでもそれは明らかです。北朝鮮のスパイ活動を取り締まっていた調査組織で、保守政権時代、革新系の人たちはスパイだということで摘発や監視の対象になっていました。

 長年の軍事政権や保守政権下での悪弊をなくすという、積弊清算の運動が軍にも入ったわけです。機務司令部が朴政権に抗議するロウソク集会を抑えるためにクーデターを計画していたという名目でした。当時の司令官は抗議の自殺をしました。

 ですから、韓国軍には今でも文政権は許せないという感情があります。現役は表立ってそういう言動はしませんが、OBは猛反発しています。反文政権の集会に元軍人が多く参加しているのはそういう経緯があるからです。

 2018年10月に韓国・済州島であった国際観艦式の海上パレードで、韓国側が参加艦艇に対し、マスト中央に軍艦旗を掲げず、その両側に自国国旗と韓国国旗を掲げるよう要請したことがありましたが、あれも青瓦台の指示だったようです。

 軍艦旗を掲げるのは海軍の世界では常識というか義務なのに、文政権は全く無視です。日本は、結局、参加しませんでしたが、参加した10ヵ国も、軍艦旗として国旗を使っている米国も含め、オーストラリアやタイなど参加艦艇全てがマスト中央に軍艦旗を掲げてパレードに参加しました。

 さらに観艦式が終わった後、韓国海軍主催のパーティがあって各国の海軍参謀長ら軍のトップが集まりましたが、文大統領は顔を出しませんでした。それどころか、米空母の入港を阻止するため、海上デモをした反対派の集会に出席していたそうです。

 韓国軍を軽くみているということで、特に軍OBたちの不満がたまっています。GSOMIAの破棄で軍人たちは政権への不信感をさらに強めたのです。

防衛首脳同士の情報交換に支障
韓国のミサイル防衛網に穴
――11月にGSOMIAが失効すると、日米韓の軍事情報の交換はどう変わるのでしょうか。

 2012年に韓国がGSOMIAの締結をドタキャンした際、北朝鮮の核・ミサイル発射実験などは続いていましたから、防衛当局者間で、なんとか対策を考えないといけないというので、核・ミサイル情報だけは当局者間で共有しようという取り決め(TISA)を作りました。GSOMIAが失効すると、このTISAの枠組みに戻ります。

 GSOMIAのように日韓が米軍のシステムにアクセスしても、リアルタイムでは日韓それぞれの軍事情報は得られなくなり、例えば韓国軍が自衛隊の情報を要求する際には、米軍に仲介してもらわなければならなくなります。

 米軍を経由して自衛隊に依頼がきて、これに応じれば情報が伝わります。ただ常に米軍の仲介後になりますから、韓国軍が情報を得るのは当然遅くなります。

 もう一つこのTISAの枠組みで始まったのが、日米韓のミサイル防衛の通信訓練です。イージス艦同士でレーダー情報やデータを共有するという訓練です。最近は行われていないようですが…。

 ただし、韓国軍のイージスシステムは、まだ弾道ミサイル対処用に改造されていませんから、実際に日米韓で一緒にミサイル防衛できるかといわれれば、それには疑問符がつきます。

 北朝鮮がミサイルを発射した際、最初に探知するのは米軍の早期警戒衛星です。これは韓国軍も同様です。その後、日韓それぞれが自国軍のレーダーで探知し追尾する。

 日本の場合は、下甑島や淡路島などに設置されている航空自衛隊の巨大レーダーが探知・追尾します。TISAの枠組みで、韓国軍が求めてくるのはこの航空自衛隊のレーダー情報になるのです。

 当面、一番大きな影響は、日韓、あるいは日米韓の防衛首脳同士の情報交換ができなくなることです。GSOMIAというお互いの秘密保護の前提があったから、首脳会議で、北朝鮮のミサイル情報の分析や対応などの話ができましたが、それができなくなります。

 会議の場で米国が仲介する形でならば軍事秘密の話ができるかもしれませんが、日韓関係がぎくしゃくしている中では深い話はできないでしょう。

 実際に、公式の防衛首脳会議を開催できない状態が続いていますし、情報部門同士の会議もすでに止まってしまっているようです。

 ただいずれにしても困るのは韓国軍で、自衛隊は困りません。

朝鮮半島有事の場合
日韓が一緒に戦うことはない
――朝鮮半島有事の場合などの日米韓の防衛協力はどこまで考えられていて、GSOMIA失効の影響はないのでしょうか。

 仮に朝鮮半島有事という事態になれば、基本的には、日本と韓国は同盟国ではないですから一緒に戦うことはありません。

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 米軍は米韓同盟と日米同盟は完全に切り離して考えています。有事の際には、在韓米軍司令官が全ての作戦を指揮して韓国軍と一緒に戦うことになります。

 在日米軍は、空軍と海軍などの一部を在韓米軍に兵力として差し出すでしょうが、在日米軍自体は後方支援に徹する。そして自衛隊は、その在日米軍や来援する国連軍に対して支援をするという重要影響事態法(旧周辺事態法)に基づく形で関与することになるのです。

 中国軍やロシア軍に対する監視などについては、韓国軍はそれほど関心が高くありません。

 中国との間では島の領有権争いはあるのですが、日本に対するほどの強硬姿勢は中国にはとっていません。事大主義的なところがあるのでしょうか。いずれにしても彼らの関心はほぼ朝鮮半島有事のことです。

 GSOMIA失効後、日米韓の防衛協力ということでは、ミサイル防衛のため、本来は通信訓練ぐらいは行う必要があるのでしょう。しかし2017年のように、日米韓海軍が合同演習をしたり、米軍の爆撃機を日韓の空軍が護衛したりという、北朝鮮に対するデモンストレーションはこれから難しくなると思います。

 仮にやれと言われても、現場にしてみればぎくしゃく感がぬぐえないでしょう。

日本は「仮想敵」ではない
政治的に“対立”が作られる
――韓国軍は日本を「仮想敵」にしているという話もありますが。

 ご承知の通り、今の韓国国防大臣は、航空自衛隊幹部学校で2度の教育を受け、日本語も話せます。このように今も防衛大学校や幹部学校では韓国軍人を受け入れています。

 自衛隊と韓国軍の関係は政治的な関係とは別に、良好な関係を維持してきたのです。李明博大統領が竹島に上陸して日韓関係が険悪化した時も、防衛交流は続いていました。

 韓国海軍の先生は海上自衛隊です。韓国海軍が潜水艦やP3Cなどを購入した時も、海上自衛隊に運用法や戦術を教えてほしいと頼んできたものです。秘密事項は教えられませんでしたが(笑)。

 韓国海軍には、海上自衛隊保有しているからという理由以外に予算要求の理屈がないという事情があるのです。陸軍や空軍は北朝鮮の脅威を理由に朝鮮半島有事を想定した予算要求ができますが、ほとんど海軍がないに等しい北朝鮮相手では、韓国海軍は予算がつかないのです。

 大将の数も陸軍が4名、海空軍は1名ずつと、その組織規模も明らかに違います。海軍にしてみれば、日本の海上自衛隊がこういう装備をしたから、うちも必要だと言って予算を要求するしかないのです。

 私がこうしたことを言えるのは、お互い、本音で言い合える関係があったからです。彼らに、「予算要求の事情はわかるが、例えば、2007年に就役したヘリコプター空母に、『独島(竹島の韓国名)』という名称までつけるのはいかがなものか」と問うと、「すまない。青瓦台の指示だ」と言っていました。

 自衛隊の哨戒機に武器管制レーダーを照射した韓国艦船も、日本と戦って勝った歴史上の人物の名前がつけられていますが、それも同様の理由なのでしょう。

 どういう経緯であの事件が起きたかはよくわかりませんが、あの名前の艦船に5年以上勤務する兵隊レベルの乗員は、残念ながら反日感情が高まることがあるのかもしれません。

 しかし、艦長など1年か2年で交代する士官たちは、きちんと判断し、そういった政治的な行動を抑えるよう指導するのが仕事です。あのレーダー照射事件の際も、海軍参謀長は 艦長に対する徹底調査を命じたのですが、青瓦台からその調査自体を止められたそうです。

 外交ではどうしても双方の政治的思惑が反映されて、意図的に対立が強調されたりします。

 米国でもそうですが、トランプ大統領が強硬策を打とうとするのを抑えてきたのは、軍事を熟知する軍の参謀長であったり元将軍・提督だったりするのです。

 私が懸念するのは、GSOMIAの破棄でこうした日韓防衛当局間の平素からのコミュニケーションがなくなることなのです。

北朝鮮は文政権を“無視”
米韓同盟の形は残るが
 北朝鮮との融和を優先していると考えれば、文大統領のやっていることはそれなりに一貫しているのかもしれませんが、肝心の金正恩委員長からは無視されているのに等しい状況です。

 北朝鮮からみても、文政権は信用できないと考えているのではないでしょうか。

 米軍と韓国軍が、北朝鮮との戦争を想定して図上演習をする米韓合同演習というのが春と夏に行われるのですが、第一回米朝首脳会議後はやめたのですが、今年は実施しました。

 特に夏の演習は、米軍は先生役で、実際の演習は韓国軍だけで行います。将来、戦時統制権を韓国側に戻しても韓国独自でも戦えるようにするためですが、金委員長にしてみれば、南北仲良くやろうと言いながら戦争の準備をしているじゃないのか、というわけでしょう。

 それにそもそも北朝鮮は、文政権よりもトランプ大統領だけを相手にして交渉するという姿勢です。

 文政権としても、トランプ大統領には、日韓の仲裁に入ってもらい、日本のホワイト国指定解除をやめさせてもらうことを期待したのでしょうが、トランプ大統領がそれで動いた様子もみえません。

 もともとトランプ大統領朝鮮半島情勢に関心をもっていたとは到底思えません。駐留経費がかかるので在韓米軍を減らしたいと言い、朝鮮半島の非核化や安定は、ノーベル平和賞を取れる材料になる程度にしか考えておらず、金正恩委員長はそれに利用できるとしかみていない、と思えるところがあります。

 米軍も、朝鮮半島有事の際は、陸上戦闘は韓国軍が中心として戦い、米軍が行うのは空軍や海軍によるアウトレンジからの空爆というように、米軍軍人を傷つけないための割り切ったことを考えているように見受けられます。

 こうしたことを考えれば、中長期でみれば米軍の兵力自体は朝鮮半島から次第に引いていくかもしれません。

 しかし韓国軍は、米軍の作戦システムがないと戦えませんから、米韓同盟という枠組みは当然残りますし、韓国にとっては日本を含めた日米韓の防衛協力が必要であることはかわらないのです。

 こうした状況を青瓦台も冷静に考えることができるようになれば、いずれ韓国から日本に対してGSOMIA再開を求めてくることが十分あり得るのだと思います。

伊藤俊幸(いとう・としゆき)/1981年に防衛大卒業後、海上自衛隊入隊。潜水艦「はやしお」艦長などを務めた後、在米日本大使館防衛駐在官防衛省海上幕僚監部の情報部長として、北朝鮮の核開発、「9・11」テロなどの安全保障、危機管理を担った。海上自衛隊呉地方総監を最後に2016年退官。現在は金沢工業大学虎ノ門大学院教授(リーダーシップ論、安全保障論)

ダイヤモンド編集部/西井泰之