最近経済学者が「失われた10年」の候補を探そうと全世界を探しているが、韓国があるため、それは容易に見つかる。
過去10年余り、韓国は失われた10年の提唱者を何度も慌てさせた。2008年にはアイスランドのように崩壊すると言われたがそうはならなかった。13年の米国による利上げなどで新興国から資金が一斉に引き揚げられる「テーパー・タントラム(市場の過剰反応)」が起きた当時も韓国に対する悲観論が高まったが、またもそれは外れた。昨年には米中貿易戦争が始まり、韓国の負債は「安全資産」扱いされたりもした。しかし、韓国の現実を見れば、今後10年はほぼ成長ゼロの可能性が高まっている。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領は国会での施政方針演説で、韓国の輸出依存型経済が深刻な状況に直面していると警告した。その上で、貿易紛争と保護貿易主義に矛先を向けた。しかし、韓国の経済既得権層も鏡の中の自分を見つめるべき時が来た。
過去10年間、韓国の指導者は革新と生産性向上によって、輸出に依存しない経済を実現すると約束してきた。巨大化した財閥の役割を弱め、中小企業とスタートアップが成長できる空間を整えるというものだった。2008年当時、李明博(イ・ミョンバク)元大統領が青瓦台入りし、激変が予想されたが、改革はすぐに終わってしまった。現代建設の最高経営責任者出身の李氏が現状を覆すと考えることは決して合理的ではなかった。朴槿恵(パク・クンヘ)前大統領は13年、成長、雇用、分配がプラスの循環を起こす経済システムを約束した。そして、いくつかの大企業が主導する成長には限界があると確信した。父親の朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領が1960-70年代に築いたシステムを破壊する様子からは「歴史的な叙事」が感じられた。とはいえ、朴前大統領は家族経営の大企業グループの地位に切り込むところまでは行けなかった。文大統領は経済モデルの民主化を約束した。噴水効果(所得主導成長)を掲げ、有権者を興奮させた。トランプ米大統領や日本の安倍首相が成長を通じたトリクルダウン効果を目指しているのに対し、文大統領は法人税、最低賃金の引き上げを選択した。しかし、文大統領は他のことに気を取られた。北朝鮮との平和を中心軸に据えたことは称賛に値するが、文政権は「マルチキャスティング(多重作業)」は不得手だった。韓国は金正恩(キム・ジョンウン)と交渉するのと同時に経済構造調整も進めなければならなかった。文大統領の成績は2勝か3勝ぐらいを上げたとしても、在任900日間は改革という観点では失望だ。前任の李大統領、朴大統領の3300日も同様だ。歴代の3人の大統領が在任した4200日を浪費してしまった格好だ。スタートアップブームを起こし、硬直した企業システムを国際化し、女性に活躍してもらい、輸出からサービス業へと成長のエンジンをシフトすることができた11年4カ月を無駄にしてしまったのだ。
画期的に変化するためには、迅速に行動することが最善だ。日本の安倍首相、インドのモディ首相は政治的リスクがあるアップグレード措置を早期に実行できなかったことを残念がった。安倍が官僚主義を減らし、中小企業支援、労働市場の柔軟化に早めに取り組んでいたならば、日本はトランプ政権との貿易戦争にこれほど弱くはなかっただろう。
文大統領にはまだ形勢逆転のための時間が残されている。しかし、最近の統計は経済学者がなぜ韓国の未来を懸念しているのかをよく物語っている。9月の消費者物価は初めてマイナスに転じた。10月の最初の20日間で輸出は前年同期比10.5%減少した。日本との対立はプラスにならない。
韓国が必然的に「日本型デフレ」に至るわけではない。しかし、政策のミスが許される範囲は狭くなっている。韓国銀行は今月16日、政策金利を1.25%に引き下げ、追加利下げにも余地を残した。文政権が財政拡大に乗り出す可能性も高い。
しかし、重要なのは経済的パワーのバランスが変わることだ。財閥の独占的な状況に断固たる措置を講じるべきだ。反独占政策の強化はスタートアップが新たな富と雇用、革新的なエネルギーを創出する余地を広げることにつながる。税制優遇策は企業が輸出ではなく、国内のサービス部門に目を向けるようにするために活用可能だ。ベンチャーキャピタルの育成にも生かせる。女性労働力のためにグラウンドを平らにならし、より多くの外国人の誘致にも関心を向けるべきだ。
2008年または13年、17年に韓国がそうした措置を講じていたならば、現在のようにトランプ政権の関税圧力に押されることもなかっただろう。韓国にはまだ選択権がある。今果敢に行動するのか、それか自暴自棄になり、失われた10年を受け入れるのかだ。
ウィリアム・ペセック(コラムニスト)=「ジャパナイゼーション――日本の「失われた数十年」から、世界は何を学べるのか? 」(邦題)著者